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河合塾 国語科講師
岩田 亜希子
先生

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結びつける力

 河合塾の高校受験ジュニアコース6年生の授業の中に、こんなテーマで作文を書かせる回があります。
今、世の中で話題になっていることで気にかかることと、その理由を、三百二十字以上四百字以内で書け。
 子どもたちは新聞やインターネットを利用し、事件や社会問題について下調べをしてきます。
 ところが、その説明で終わってしまうことが多いのです。
 作文を書くためのメモには、「どうしてそれを選んだのか」「自分はどう思うか」という自分に引き寄せて考えさせる項目も作ってあるのですが、初めはここが書けません。書いたとしても「~してほしいと思いました」という他人事で終わってしまうことが多いのです。
 問題と自分の生活を結びつけて考えることができないのですね。
 たとえば、環境問題。
 一時期に比べると数は減りましたが、読解問題で扱われる文章の一分野を築いていますし、青少年読書感想文全国コンクールの課題図書にも、環境問題に関する本が毎年選ばれています。小学生にとっては、比較的理解しやすいテーマだと言えます。
 子どもたちは「熱帯雨林の伐採が、ずいぶん前から問題になっている」「紙の材料は木である」「紙はリサイクルすることができる」「リサイクルのための取り組みが行われている」ということは知っています。しかし、それらを関連させることができないため、「自分に何ができるか、自分はどうすべきか」を考えられないのです。
知識が単純で存在しており、関連していない状態
知識が単純で存在しており、関連していない状態
 このことは「論説」の読解にも影響が出てきます。
 中学、高校と年齢が上がるにつれて読解問題で扱われる文章に社会や言語、文化のような抽象的なテーマが増えます。これらは多くの中学生や高校生にとって、日常会話で出てくるトピックではありません。
 抽象的なテーマは、より多くの具体例を知っているかどうか、それらをまとめて抽象化できるかどうかで理解度が変わってきます。結びつける力がないと、文章に使われている言葉自体はわかるが、具体的なイメージができずに筆者の主張も理解することができない、ということになりがちなのです。

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小学生のうちにやっておきたいこと

 知識も思考力・想像力も、どれだけ「勉強としてではなく身に着けることができたか」が大きいと思っています。
 小学生の間は、この「勉強としてではなく」ができる貴重な時期です。
 一緒に出かけたとき、日常生活の中で何かを見たときに、お父さんやお母さんが体験したこと、知っていること、考えたことを、ぜひ話してください。「教える」ことは意識しなくて構いません。
 「事象と事象がつながっている」という発想自体がないために結びつけて考えられない場合もあるため、大人が話の中でいくつか「つながり」を見せるだけで変わる子もいます。
 近年は「中日こどもウィークリー」をはじめとする子ども向け新聞も、各新聞社から発売されるようになりました。これらは時事問題を子どもにもわかるようにかみくだいて伝え、なおかつ子どもたち自身と結び付ける工夫がなされています。
 そうしたものも利用して、週に一度、月に一度でもいいので、ニュース番組や新聞でおたがいに気になった話題について説明したり話し合ったりする機会を作るのもいいと思います。子どもの話を聞きながら「だれが?」「何を?」「どうして?」と尋ねることで、情報を取捨選択することの必要性や、説明の仕方を学ぶこともできます。
 ポイントは、子どもだけにさせるのではなく、親御さんもすること。
 子どもたちはお父さんやお母さんが想像しているよりも、親の話したことを覚えているし、家族が好きなもの、話題にしたものには、多かれ少なかれ興味を持ちます。そうした対話の中で、単独の情報や知識でしかなかったものが、他の知識や情報と結びついたり、思考のきっかけになったりしていくのです。