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河合塾 社会科講師
志村 裕之
先生

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社会科で求められている力

 教科書の学習では、例えば地図帳から得られる情報を、自分の力で単元の内容の理解に結びつけることが大切であると述べましたが、新学習指導要領では、どうなっているでしょうか。
新学習指導要領の三つの重点は、
 ①知識及び技能の習得
 ②思考力・判断力・表現力等の育成
 ③学びに向かう力・人間性等の涵養
です。
 今後の学校での学びでもそうした点が重視されていくのでしょうが、それらを意識した動きが、すでに高校の入試問題にも表れています。次の問題は2020年度の愛知県公立高校入試問題(社会科A日程入試)です。とり上げたのは日本地理について問う大設問3の問題です。

⑴の問題によって資料中のCは新潟県であると判断できているので、(2)の文中①は、新潟県の場所の気候や地形の特徴と産業のようすから考えて、豪雪とよばれることがあるほど雪が多く「冬季に農作物を栽培できない」という説明文のほうが適当であると判断します。Ⅱの資料は、金額や数ではなく、割合を示すグラフではあるので判断が難しいですが、一事業所あたりの製造品出荷額というのは、製造品出荷額が少なくて事業所の数が多くなるほど小さくなるということを、グラフから読みとって、正答のアを選びます。この問題からわかるのは、知識の重要性とともに、このとき初めてみる資料の内容を読みとり、自分の力で必要な情報を選択し、選択肢の中から最も適当な解答を判断できる力が、強く求められているということです。

 こちらも2020年度の愛知県公立高校入試問題(社会科B日程入試)で、公民分野の大設問5の問題です。

この問題では(注)において倫理的消費という消費行動の内容が説明されており、消費者の消費スタイルが倫理的消費に合致するためには、公民分野の学習で知識として内容を知っている「情報公開」と「個人情報の保護」のどちらが、説明文の内容としてよりふさわしいかを考察し、正答のウを選ぶというものです。つまり、多くの受験生がはじめて知る倫理的消費という語句と、知識として知っている社会科の用語を用いて、文章の内容が合理的なものになるように語句を選択するのです。この倫理的消費のような教科書の学習だけではフォローしきれない、同時代の世の中の動きなどへの理解を深めるためには、インターネットのニュースサイトだけではなく、実際に新聞に目を通すということも心がけておきたいです。中学生になると定期テストに、一定期間の新聞記事を出題範囲とする時事問題が出されることが増えてきますが、それは社会科の単元の理解に、社会のできごとへの関心が不可欠だと考える先生方が多いということもあるのでしょう。
今後はますます、与えられた資料のなかから問題解決のために必要な資料を、自分の力で選択し、判断するという考察の力が、社会科の学習で求められていくことでしょう。

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文章を読み、書く力と、情報のあふれるなかでの社会科の学習

 近年は、大学入試でも知識を問う問題だけでなく、図や表などの資料を提示し、その内容をよみ取り、必要な情報を取り出し、判断し、考察するということが必要な問題や、考察した内容を論述するという問題が増加しています。そうした問題に対応するために必要なのが、文章を読み解く力であり、論理的な思考をもとにして文章を書くという力です。新学習指導要領では、アクティブ・ラーニングに代表される「主体的・対話的で深い学び」を重視することが示されています。「対話的な学び」というと、友だちとの対話をまず思いうかべますね。しかし、誰もがインターネットを利用して膨大な情報を、簡単に手に入れられるようになっている社会では、手に入れた情報の内容を検証し、自分の作業や考察の内容がどのように行われたものなのかなどを客観的に確認し、自分に対して問いかける、すなわち自分と対話するということも、とても大切になるのです。自分で考え、判断するといった作業をくり返す、そのことが主体的な深い学びにつながりますし、今後ますます求められる力であると考えられます。また、そのようにして選んだ情報を根拠として自分の考えを文章にまとめてみるということもぜひ挑戦してください。