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vol.07
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奥三河天狗なす
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Category
伝統野菜

戦前から農家さんが食したナスは
大トロとも称されるトロトロの食感が絶品です!
色とりどりの野菜に、みずみずしいフルーツ……毎日の食卓をゆたかに彩る新鮮な農産物。
「ほっとマルシェ」では、伝統野菜や新顔野菜、全国にほこる野菜など、意外と知られていないご当地の農産物を紹介します。地元で生産されているものを知るだけで、毎日のお料理がさらに楽しくなるかも!?第7回は、戦前から愛知県設楽町津具地区を中心に栽培されている「奥三河天狗なす」をご紹介します。一般的なナスよりも栽培に手間はかかりますが、そのあまりの美味しさに、農家が自家消費用として栽培していたそう。今でも、市場に出回る数は限られているため、とても貴重な野菜の一つです。2007年には「あいちの伝統野菜」※にも認定。そんな「奥三河天狗なす」の魅力を教えてもらいました。
※「あいちの伝統野菜」には「天狗なす」で認定されています。
あいちの伝統野菜とは

温暖な気候と豊かな水、土壌に恵まれた愛知県では、古くから野菜づくりが盛んに行われてきました。当時は優れた品種を生み出す種苗業者や農家も多く、野菜づくりの発展に大きく貢献。実はこれらが、普段みなさんが目にする野菜のルーツだったりするのです。現在では、そんな昔ながらの野菜を見かける機会が少なくなってしまいました。愛知県では、歴史的・文化的遺産として見直すと同時に、再び身近な野菜に感じてもらうことを目的に、4つの定義を満たす35品を「あいち伝統野菜」として認定しています。

メロンのような翡翠色の果肉を持つナスは
一度食べるとその食感と甘みが忘れられません!

戦前から愛知県設楽町津具地区の農家を中心に栽培されたナスで、遅(おく)ナスや丸ナスと呼ばれてきました。一般的なナスに比べて4〜5倍(400〜600g以上)もの大きさになり、その果肉は火を入れると綺麗な翡翠色になります。特徴はなんと言っても、やわらかさ。熱を加えると、とろけるような食感に甘みと旨みが加わり、まさにナスの大トロです。しかしその栽培には、実の重みで枝が折れないようにするなどの細かな気配りと手間がかかるため、市場に出回ることはなく、美味しさを知る農家が自家消費用として栽培してきました。
「天狗なす」の由来は、まれ(全体の1〜5%ほど)に天狗の鼻に似た突起ができることから。地元に伝わる天狗伝説にちなんで名付けられました。
「天狗なす」の由来は、まれ(全体の1〜5%ほど)に天狗の鼻に似た突起ができることから。地元に伝わる天狗伝説にちなんで名付けられました。

「奥三河天狗なす保存会」の会長を務める
佐々木富子さんからのメッセージ

「奥三河天狗なす」は、津具地区ではお盆に帰省した親戚のお土産に使われるなど、昔から親しまれてきた特産野菜です。しかし、病気に弱く収穫量も少ないため、地元でのみ消費されてきました。そんな中、名古屋市中央卸売市場の青果店に勤める同級生が、「故郷の美味しいナスを世に広めたい」と働きかけたことで、徐々に市場に出回るように。私たち生産者も期待に応えるため、露地栽培から温室栽培に切り替えたり、実の重さで枝が折れないように網を張ったり、収穫量を増やす努力を続けてきました。ですが…栽培時に要する手間に加え、そのやわらかさから収穫時にも最新の注意が必要となるなどデリケートな野菜のため、一時は40軒ほどいた生産者も現在は10軒ほどに減少しています。
水分をたくさん含んだやわらかな果肉の「奥三河天狗なす」。食べると口の中でとろけるため、「嚙む前になくなっちゃう」と言われることも。朝晩の寒暖差ときれいな空気、水など、奥三河の風土に育まれた美味しさを、ぜひお試しください!
水分をたくさん含んだやわらかな果肉の「奥三河天狗なす」。食べると口の中でとろけるため、「嚙む前になくなっちゃう」と言われることも。朝晩の寒暖差ときれいな空気、水など、奥三河の風土に育まれた美味しさを、ぜひお試しください!
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鳥獣よけとして使われてきたノリの養殖網を張り、枝が折れないように工夫しています。
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実が大きくなる前に枝と網をテープで固定するなど、細かな手作業が奥三河天狗なすを美しく育てます。
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葉の大きさも特徴の一つ。日光を遮らないようにするため、葉を間引くことも大切な作業です。
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ヘタには、鋭く立派なトゲがあるのでご注意を。ハサミで落としてから調理するのがおすすめです。
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一般的な千両ナス(左)と奥三河天狗なす(右)。その差は一目瞭然です。
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オススメの食べ方は焼きナス。まるでメロンのようにトロトロで、みずみずしい甘みが楽しめます。
DATA
とみちゃんの畑(佐々木富子さん)
- 【住所】
- 愛知県北設楽郡設楽町津具字東溜渕220
プロの料理人にもファンが多い「奥三河天狗なす」。佐々木さんが栽培したものは、「とみちゃんの大トロなす」として地元や東京などのレストランに出荷されています。
どのように調理しても美味しい「奥三河天狗なす」ですが、佐々木さんのおすすめは焼きナスや揚げナス。熱を加えることで、美しい色ととろけるような食感が楽しめます。
どのように調理しても美味しい「奥三河天狗なす」ですが、佐々木さんのおすすめは焼きナスや揚げナス。熱を加えることで、美しい色ととろけるような食感が楽しめます。
※「奥三河天狗なす」の購入などのお問い合わせは下記まで。