• 2016年
    (平成28年)
    11月9日
    (水曜日)

    名古屋から車で走ること約60分。岐阜県関市を深く聞き込みます!

    いつにも増して真剣な面持ちの編集長。宇治橋を渡ると、神域が広がります。

     当代の桂文枝さんが昔「三枝」の名前で、1970年代初頭にアイドル的な存在だった頃の口演がレコードで残っている。「七度狐」という旅もので、本題に入る前のマクラが初々しい。

    「道を聞こうと思って、お伊勢さんどこですかあ、言うたら、そこの角曲がったとこやー、て言うから行ってみたら田中医院て書いたある。お伊勢さんとお医者さん間違えやがんねん(笑)」と言う他愛ないネタなのだけれど、関西の落語家は伊勢神宮に参る話のためにこう言う小噺をいくつも創作して持っている。上方の落語には伊勢参りにまつわる題材が重要な位置を占めているので、マクラで喋ることが多いのだ。

     江戸時代は、それぞれの藩が統治する諸国を自由に行き来することはできなかったが、「伊勢参り、おかげ参りに行く」と言う名目ならば低いハードルで通行手形を取得して旅に出ることができた。お上にとっては、伊勢参りがそれだけ重要なこととして扱われていたからなのだろうなあ。

    あいにくの雨……とスタッフが沈んでいたら、広報の方に「神宮の雨は、清めの雨ともいわれます」と教えていただきました。
    表参道に敷き詰められた玉砂利を踏みしめるだけでも、心が洗われるようです。

     お伊勢さん。全国の神宮の中で、神宮といえばここだけ、と言うと変な言い方だけれども、ここは正式名称が「神宮」であって、伊勢は言葉として耳で聞いていると流れるほどに短いので座りを良くするために「伊勢神宮」と言うならわしができてしまったのかもしれない。内宮、外宮、別宮、摂社、末社、所管社合わせて125社の総称で、敷地を大雑把にまとめると、伊勢市の三分の一か四分の一か。東京の世田谷区や、フランスのパリ市に匹敵する広さだそうな。

     この度は時間の都合もあって内宮をお詣りさせていただいた。参集殿奉納舞台では、間の良いことに雅楽が演奏されるということで、しずしずと赴いた。舞楽では最初に演じられるという「鉾振(えんぶ)」が舞われ、「迦陵頻(かりょうびん)」「蘇利古(そりこ)」「長慶子(ちょうげいし)」という流れで披露された。やんごとなく厳かな気持ちで、私の中の淀んだものが浄化されて行くような塩梅になる。雅楽が、中国やインド、朝鮮からもたらされた文化を成熟させたものだということがわかりやすく解説され、日本の大元、精神的支柱である神宮が根本的に近隣の国々や民族との「ゆかり」を重んじている証左だと思われる。日本だけを最高と持ち上げ他国を蔑む人が「愛国者」だと自称しているのを目にするが、ただ虚しく嘆かわしい限りだ。

    秋分の日を中心とした3日間、秋の神楽祭を開催。今年は台風の影響もあり、採集殿奉納舞台で神宮舞楽が披露された。
    神宮舞楽を見つめる編集長の背中から、厳かな気持ちがひしひしと伝わります。
  • 2016年
    (平成28年)
    11月9日
    (水曜日)

    清々しい気持ちでいても
    やっぱり、空くものは空くんです。

     広報担当の紳士に色々伺っていると、昨今はパワースポットのブームによってさらに参拝客が増えたけれど、神宮司庁はどうもこの用語を快く思われていないようで、パワースポット嫌いの私からすれば「さすが!神宮!」と思ってしまうのだが、例年は800万人ほどの参拝客が、2013年の式年遷宮の時には年間でおよそ1420万5000人にも増大したという。あやかりたいという気持ちがあるのはわかるが、この場合どうあやかればいいのか私にはわからない。そもそも、お詣りというのは我欲を捨てて身も心も清々しく、できることは全てやったことを神に報告しに行くぐらいの気持ちであってほしい。あやかろう、パワーを貰おう、福を授かろう、商売繁盛で笹もってこいも、心は清々しく参加したいものだ。

     内宮の参道は右側通行だ。お詣りするための経路の構成上、内宮が右側で外宮が左側通行らしい。どういう理論なのか、渋滞学の西成活裕教授に教えてほしい。

     お詣りの際に御手洗で手を清めるのが習わしだが、ここでは五十鈴川の清流で清めることができる。なんという甘美な恩恵だろうか。この川に掛かる橋の数メートル川上には、等間隔に杭のような物が立っていて、おそらく橋脚の上流への延長線上に配置されている。

    前日の台風の影響で増水していましたが、広報の方のお許しを得て、五十鈴川でお手水を。

    もちろん澪標のような役割ではないだろうと思っていると、「あれは木除杭(きよけぐい)ですよ」と教えていただいた。増水などで川の流れが速くなると、流木などが橋脚に当たってダメージを与えるので、橋が流されないよう、流木の向きを変えて橋脚に衝突するのを防いだり、勢いを緩和させるのだという。山の保水能力が失われて気候変動で増水することも多くなった今、全国の木造の橋にはこの工夫を施していくべきだと思うが、どうだろうか。すでにあるのを私が気づいていないだけかもしれないが。

     伊勢志摩サミットで訪れた各国首脳やキャロライン・ケネディ駐日大使によって記念植樹された木や神鶏に遭遇してありがたがりつつ参拝を終了。心なしか、疲れているはずなのに体が軽くなったような気がした。そうか、腹が減ったのだ。

    神宮の森では、樹齢400年から900年の巨木に目を奪われます。「動き出しそう!」と編集長も驚きの大きさです。
    神苑などでは、神鶏と呼ばれるニワトリが放し飼いにされています。
    キャロライン・ケネディ駐日大使によって記念植樹された木にも遭遇しました!
    身も心も軽くなったお陰で、足取りも軽やかな編集長。あれっ?おなか鳴っていませんか?
    松尾貴史
    編集長松尾貴史
    1960年5月11日生まれ。兵庫県神戸市出身。大阪芸術大学芸術学部デザイン学科卒業。俳優、タレント、ナレーター、コラムニスト、"折り顔"作家、カレー店「般°若」店主など幅広い分野で活躍。
    著書にPHP新書「なぜ宇宙人は地球に来ない? 笑う超常現象入門」等多数。
    舞台Dステ19th「お気に召すまま」に出演。(10月14日〜30日@東京・本多劇場、11月12日〜13日@山形・シベールアリーナ、11月19日〜20日@兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール)
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