今回は坂井さん
坂井修一(さかい・しゅういち)
酒井さん

歌人・東大教授。「未来」とは私たちではなく、子供たちのための言葉のはずですが…。

アシモフの楽観主義

 人類の未来。さあ、どんなものになるのだろう。<1>アイザック・アシモフ『ファウンデーションの彼方へ』(上)(下)(岡部宏之訳、ハヤカワ文庫=品切れ)は、SFの古典として高名な「ファウンデーション」シリーズの四作目にして、ヒューゴー賞を受賞した傑作。この本では、ゴラン・トレヴィズという直感力に優れた人間が(1)テクノロジーの帝国(2)テレパスが制御する精神の王国(3)汎生命の集合意識の世界、の三つの中から、人類の未来を決定する。

 この三択を用意したのは誰か。なぜ「直感力」が決めるのか。これ以上は言えないが、本書を含めてこのシリーズの壮大さとアシモフの知的構築力には感嘆するほかない。その上で、私などは、彼のもつ二十世紀的なオプティミズム(楽観主義)にも羨望(せんぼう)を禁じ得ないのだ。

 <2>ヨルゲン・ランダース『2052-今後40年のグローバル予測』(野中香方子(きょうこ)訳、日経BP社・2,367円)。こちらは近未来を科学的に予測し、警告した本。今世紀半ば、人口爆発・資源や食料の枯渇・環境汚染と地球温暖化などで、この地球と人間社会はどうなっているだろうか。

 著者はローマ・クラブ会員で『成長の限界』の執筆者の一人であり、本書は長期にわたる研究調査の結論である。


彼の示す二〇五二年の世界は、かなり悲惨なものだが、それは「解決できるのにやらない」人間社会の愚かさに由来するのだ。私たちの行動指針を述べる終章には、大いなる皮肉とまじめさが込められている。

 <3>武上純希『ウルトラセブン EVOLUTION』(ソノラマ文庫=絶版)は、ウルトラセブン誕生三十五周年記念オリジナルビデオのノベライズ。そういえば子供向けの冒険ドラマのようだが、中身はハードで重い。過去から未来に至る地球の歴史を記したアカシック・レコード。そこには人類絶滅の後に植物生命体が栄えるさまが描かれていた。

 この物語では、ウルトラセブンは超越者ではなく、地球人同様に悩める生命体である。彼には、アカシック・レコードを書き換えることはできないのだ。定点観測員の黄金竜がいちばん超越的な立場にあるが、彼が人類の未来について能動的な動きをしているかどうかは最後まで不明である。謎は残されたままだ。

 『ファウンデーションの彼方へ』に比べて、『ウルトラセブン EVOLUTION』は二十一世紀的な悲観主義が色濃く出ているようだ。アシモフの理想主義の香気はいまだ捨て難いが、武上のこの本にも熾火(おきび)のぬくもりのような魅力がある。

ファウンデーションの彼方へ
『ファウンデーションの彼方へ』(上)(下)
アイザック・アシモフ
(岡部宏之訳、
ハヤカワ文庫=品切れ)
2052-今後40年のグローバル予測
『2052-今後40年のグローバル予測』
ヨルゲン・ランダース
(野中香方子(きょうこ)訳、
日経BP社・2,376円)
ウルトラセブン EVOLUTION
『ウルトラセブン
EVOLUTION』
武上純希
(ソノラマ文庫=絶版)