今回は藤沢さん
藤沢周(ふじさわ・しゅう)
藤沢さん
作家。私の小説『武曲』が映画化。熊切和嘉監督、綾野剛主演。来年公開! 嬉(うれ)しかー!
人が輝ける「場所」

 「新潟ショック」だとぉ? 10月16日投開票の、わが故郷越後の県知事選で、政権与党が破れたから? 「ショック」でも何でもない。当たり前の話だ。ドタバタあったが、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働が争点となった選挙となれば、日本の分岐点である。再稼働慎重派の候補(米山隆一氏)が選ばれて当然だろう。経済や行政優先など、「官」のみの縦の論理が、自治力旺盛の県に通用するはずがない。新潟県民は、「人間が生活する場所」としての安全と未来を求めたのだ。快哉(かいさい)!

 たとえば、<1>三浦展(あつし)『人間の居る場所』(而立書房・2,160円)という、コミュニティデザインを軸に、地域社会や街、都市を柔軟に考えていく楽しい本がある。「空間は人間が居なくても成り立つ。場所は人間が居て初めて成立する」という発想から、生き生きとした人々の活動をもたらす「場所」の創造について、多くの分野の人々と考える。「場所」か、「空間」か。原発が欲しいのは究極的にはもちろん後者。推進派は「人間が居なくても成り立つ」という、顛倒(てんとう)した政治に躍起になっているのである。本書は建築と都市デザインについてのものだが、国や政治、経済を考える上でもヒントになる。


 未来のための選挙は民主主義のものだが、むむ!? <2>佐伯啓思『反・民主主義論』(新潮新書・799円)なる本が。肯定、否定にかかわらず、まずは相手の意見を聞こうではないか、と頁(ページ)を繰れば、じつに刺激的かつ思考の原点が横溢(おういつ)。つまり、「民主主義」「平和憲法」は絶対的に良いものだ、という信仰めいた一途さが、思考停止を招いているのではないかと提起。「平和、大事。憲法、守りたい」。私など然りだが、民主主義に隠された欺瞞(ぎまん)をまずは見抜いて、考えていく一人一人の作業が、基本であると。いつのまにか政治への強制に組み込まれないためには、内なる「文学」が必要だとも。

 だからこそ、世間や社会からはぐれた人々の言葉を聞く聴力が必要になる。<3>ミランダ・ジュライ『あなたを選んでくれるもの』(岸本佐知子訳、新潮社・2,484円)は、フリーペーパーに小さな売買広告を出す人たちへのインタビュー集。他人の写真アルバムを買いあさるギリシャ移民の主婦、足首にGPSをつけられた童話売りの男、1匹2ドル50セントでオタマジャクシを売る高校生…。世界から埋没しそうな彼らの生活、言葉の数々。だが、切ないほどきらめいているのだ。

『人間の居る場所』
『人間の居る場所』
三浦展
(而立書房・2,160円)
『反・民主主義論』
『反・民主主義論』
佐伯啓思
(新潮新書・799円)
『あなたを選んでくれるもの』
『あなたを選んでくれるもの』
ミランダ・ジュライ
岸本佐知子訳
(新潮社・2,484円)